ゆる部 - ゆるく楽しく生きる

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壁にぶつかって、悩んでいる時に、本が読みたくなる。

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人それぞれ本を読む理由は違って良いと思うのですが、

私は壁にぶつかって、悩んでいる人にこそ、本を読んで貰いたいです。

というのも、本を読むことで、

過去に自分と同じ悩みを持っていた、共感できる人を見つけて安心する事ができ、

時には解決方法のヒントを知ることができるからです。

 

理想と現実が離れているほど、人は悩みます。

その悩みの対処方法としては、

「理想に現実を追いつかせようとする。」

と言う事だと思うのですが、

 

その為には「心の安心」と「具体的な解決方法のヒント」があれば、

より追いつくのが早くなると思います。

 

本には、過去に自分と同じ悩みを持っていた人がいて、

それを物理的に、もしくは、精神的に乗り越えたようなエピソードがあります。

悩みに対する引き出しが1つ増えることになります。

 

「こんな悩みを持つ人は自分だけかもしれない・・・」と思うから辛いのだと思います。

過去に同じ悩みを持っていた人は、高確率で見つかるので、その時点で結構救われます。

 

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選ぶ本は、ビジネス本でも、小説でも漫画でも良いのですが、

悩みを解決をしたい場合は、リアリティが高めの内容の方が良いです。

というのも、自然界は弱肉強食で適者生存。人にはわがままな自我(エゴ)があります。

リアリティが少ない本は、それが割合はどうであれバランスがおかしいので、楽しい事ばかりの理想的で綺麗な物語も多く、面白いのですが、それだと現実に戻る時に余計に辛くなります。

(息抜きにはいいと思います。私も大好きです。)

 

最近では、本のタイトルも、悩んでいる人が気になるようなタイトルを付けてくれている本も多いので、本屋やアマゾンなどで本を探す時、自分が気になったタイトルの本があったら、そのまま試し読みしてみるのが良いと思います。

数ページ試し読みをしてみて面白かったら、きっとそれは今の自分に合っている本なので、買って熟読するのが良いと思います。

悩みが深いほど、読み込むことができ、壁を乗り越えるヒントや悩みの解決方法が見つかるはずです。

 

それは、自分が成長している最中であって、逆に言えば、悩んでいる時にしか、読めない本があると言えるかもしれないですね。

【書評】『銭ゲバ』著者:ジョージ秋山

久々に脳裏に焼き付いて離れない本に出会いました。

ジョージ秋山さんの『銭ゲバ』です。1970年代に発表された作品です。

銭ゲバ(上) (幻冬舎文庫)

銭ゲバ(上) (幻冬舎文庫)

 

銭の為なら何でもする主人公・蒲郡風太郎(がまごおりふうたろう)は、小さい頃にお金が無かった為に母親を死なせてしまった事から、世の中銭が全てだと言う価値観の元に、倫理観を無視してお金を集めまくります。

オブラートに包んだ表現ではなく、金の為にどんどん人の命が亡くなっていくので、かなり衝撃を受けます。善悪を問うような、文学作品のようでした。理性を失った人間の汚い部分をここまでリアルに描いている漫画は衝撃的でした。

ただの金の亡者の漫画であれば、ドラマやファンタジーなのでしょう。しかしこの漫画はそこが見所ではありません。

銭ゲバ風太郎は、銭の為に滅茶苦茶しますが、度々倫理観に苦しみ続けます。「こんな風に生まれたくて生まれた訳じゃない」と言っていますし、自身の事をどぶねずみだとも言っています。また、小さい頃は優しい少年でした。

そういった所に現代の資本主義のリアリティを感じる作品です。

【書評】『火花』著者:又吉直樹

芥川賞を受賞された又吉直樹さんの『火花』を読みました。

私はほとんど小説を読んだ事がなかったので、この作品が文学としてどう評価したら良いのかなどは全然分かりませんが、読んだ感想としては、かなり面白かったと思います。

火花

火花

 

純粋に漫才を愛する、師弟関係の漫才師の二人(コンビは別)を通して、日々、起きる葛藤に、とてもリアリティを感じました。

私が印象的だったシーンをいくつかご紹介します。

シーン1:主人公の漫才の師匠である神谷が、ネットで悪口を書かれることについて語ったシーン。

ネットでな、他人のこと人間の屑みたいに書く奴いっぱいおるやん。作品とか発言に対する正当な批評やったら、しゃあないやん。それでも食らったらしんどいけどな。その矛先が自分に向けられたら痛いよな。まだ殴られたほうがましやん。

~中略~

だけどな、それがそいつの、その夜、生き延びるための唯一の方法なんやったら、やったらいいと思うねん。俺の人格も人間性も否定して侵害したらいいと思うねん。きついけど、耐えるわ。

~中略~

人を傷つける行為ってな、一瞬は溜飲が下がるねん。でも、一瞬だけやねん。そこに安住している間は、自分の状況はいいように変化することはないやん。他を落とすことによって、今の自分で安心するという、やり方やからな。その間、ずっと自分が成長する機会を失い続けてると思うねん。

これは真理かもしれません。私もよく考える事があるのですが、私達はとにかく誰かに承認されたい。だから、ほとんど無意識に自分の価値を高めることを行っているのだと思います。

実際に実力を付けるのが良いと言うのは誰もが分かっている事だとは思いますが、自信がない時は、つい手軽に誰かへの批判をしてしまいたい気持ちになる。それは偉い人や有名人であるほど良い。言うまでもなく下劣な行為です。相対的に自分の価値が上がったと錯覚しているだけです。

でも、その気持ちも、分かるのです。生きていれば自信を喪失して誰かに八つ当たりしたくなる日もあるもの。神谷は、その人が、その夜生き延びる為の唯一の方法であるなら構わないという独自の考えを持っていました。

 

シーン2:神谷を養ってくれていた居候先の真樹(実は風俗で働いていた)が、神谷と別れ、風俗で出会った男性と両思いになり新しい道を進むシーン。

それから、真樹さんとは何年も会うことはなかった。その後、一度だけ井の頭公園で真樹さんが少年と手をつなぎ歩いているのを見た。僕は思わず隠れてしまった。真樹さんは少しふっくらしていたが、当時の面影を十分に残していて本当に美しかった。圧倒的な笑顔を、皆を幸せにする笑顔を浮かべていて、本当に美しかった。

~中略~

誰が何と言おうと、僕は真樹さんの人生を肯定する。僕のような男に、何かを決定する権限などないのだけど、これだけは、認めて欲しい。真樹さんの人生は美しい。あの頃、満身創痍で泥だらけだった僕達に対して、やっぱり満身創痍で、全力で微笑んでくれた。そんな真樹さんから美しさを剥がせる者は絶対にいない。真樹さんに手を引かれる、あの少年は世界で最も幸せになる。真樹さんの笑顔を一番近くで見続けられるのだから。

人としての美しさや価値とは何でしょうか。現代は、年収や地位などが重視されすぎてはいませんでしょうか?職業で人の価値が決まってしまうのでしょうか。

どんな職業でも、人としての価値が高い人と、そうではない人がいると思います。

確かに現代では風俗嬢のイメージは良いものではありませんが、それでも主人公が、人としての心の優しさを持った真樹さんの人生を肯定するシーンはとても良かったです。

 

『火花』には、理不尽な世の中にある、純粋で優しい世界観を感じました。読みやすく、おすすめです。

【書評】『夜を乗り越える』著者:又吉直樹

 『夜を乗り越える』は、芥川賞受賞作品の『火花』でより一層有名になった又吉直樹さんの著書です。又吉さんの本との出会いや、どうして本を読むのか、などの考えが書かれているのですが、共感できる部分が多くありました。

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

 

本は僕に必要なものでした。本当に必要なものでした。自分を不安にさせる、自分の中にある異常と思われる部分や、欠陥と思われる部分が小説として言語化されていることが嬉しかった。「自分は変ではない。あるいは、人なんてみんなどこか変な面があるのだ」と知ることができました。

この文章は、私自身の本を読んでいた理由も上手く言葉にしてくれた。と思いました。

誰にも言えないような、自分だけが持っていると思い込んでいる悩みがあって、日々悶々と過ごしている時、それを上手く言葉にしてくれている本に出会うと、とても安堵します。その体験が、読書にハマっていく始まりだと言う人も多いのだと思います。

本には、悩みへのアプローチが書いてある時もない時もありますが、とりあえず同じ悩みを持つ人がいる事がただ嬉しいのです。

私は本の中でもビジネス本が好きで、小説はほとんど読んできませんでした。それはビジネス本には、その著書なりの「悩みの解決案」が具体的に知ることができるからでした。

『夜を乗り越える』を読んでからは、小説にも興味が沸いてきました。今まで生きてきて、上手く言えない悶々とした気持ちを上手く、表現してくれている言葉を探す。そんな読み方なら、私に合っていると思えました。時間はかかるかもしれませんが、今なら面白く読める気がします。

【書評】『ひとを「嫌う」ということ』著者:中島義道

哲学者の中島義道さんの『ひとを「嫌う」ということ』を読みました。

哲学の本を読んでいると、一般常識とされる事を、「本当にそうなのか?」という視点で見ることが出来るので新鮮です。

この本のテーマは「人を嫌う」と言う事についてです。日本の教育では「皆仲良くが当たり前」と教育されます。

 社会はそんな甘い所ではありませんし、そもそも自然は弱肉強食なので、皆仲良くと言うのは理想論に近いことではあるのですが、誰かを嫌いと言うのは、大声で言ってはいけない空気があります。そんな「嫌い」というタブーに切り込んでいる感じがしますが、それも哲学者と言う立場だからこそ堂々と意見が出来るのかもしれません。

世の中には不思議な考え方をする人が大勢いて、彼らは地上のすべての人を好きにならなければならないと思いこんでいる。あるいは、そこまで行かなくとも、誰をも嫌ってはならないと信じ込んでいる。ですから、そういう人は、自分がある人を嫌っていることを自覚すると、大層悩むのです。自分はXを嫌ってしまった。なんという不謹慎な不道徳的な人間なのだろう。と自分を責めたてるのです。嫌う理由が充分ありながらも、悩み続ける。

私も両親に厳格に育てられたからか、こういった考え方をしていました。誰も嫌ってはいけないし、嫌われてもいけない。いわゆる、すごく善良な人ですよね。良い人なんです。

その考え方自体は悪いことではありませんが、なんと言いますか、人は「嫌う」という感情は当たり前のようにあるわけで、その感情を持つ自分を認めた上で、誰も嫌わないように、嫌われないようなものを目指すのならいいのですが、その感情を持つこと自体が汚れている、みたいに思っていた訳なんですね。

だから常に自己嫌悪をしていましたね、交流関係も、絶対に嫌いにならない人だけを選んで付き合ったりしていました。

われわれは、普通相手から嫌われないようにすることに大奮闘したあげくにそれが報われないとなりますと、掌を返したほうに今度は相手を大嫌いに持ってゆく。相手が嫌っている以上に嫌おうと決意してしまう。「嫌い」をゼロにするように努力するか、そうでなければ無限大にもってゆく。こうした単純なに現職ですべてを塗り込めようとするから「嫌い恐怖症候群」の人生は乏しいのです。さまざまな淡い中間色、深い混合色が複雑に配置された人生のほうがずっと豊かだと思いますが。つまり、さまざまな強度のさまざまな色合いの「好き」と「嫌い」が彩っている人生こそ、すばらしいものではないでしょうか。きれいごとに響くかもしれませんが、いかなる職場でも適度にあなたを嫌う人がいたほうが、そこからあなたはさまざまな他人との関係の仕方を学ぶことができる。どこに配置されても、あなたを大好きな人ばかりはいないのですから、そしてその理由は理不尽なのですから、自分が崩れてしまうほど耐えがたいのでないのなら、そこで「抵抗力」をつける技術を学ぶことが必要です。

人を嫌うな、人に嫌われるなと言う教育は私は、あまり好きではありません。確かに人を嫌うな、人に嫌われるなと言うのは、村や会社などの組織を長く続かせたい時には有効な考え方かもしれませんが、それが通用しない場所も多いからです。

農耕民族の場合は、喧嘩をせず、野菜や米を皆で育てて分け合えれば生きていけるので、一番それが有効なのかもしれません。

ですが、広い世の中に出ればそんな事は言ってられない場合も出てきます。人には欲があります。より良い異性を獲得したい気持ちから、競争も起きます。だから出し抜く気持ちも当然出てきますし、差別意識も起きます。そこで嫌いと言う感情が出ないはずがない。

そこで、嫌いという感情を認めない場合は、自己嫌悪し、競争に負けるしかないでしょう。

そもそも人を嫌わない、嫌われない人は、人間である以上この世に一人もいないのに、それを押し付けるような風潮が私は大嫌いです。

『「嫌い」という感情は誰でも持つけれど、仲良くした方が良い時は、「嫌い」の感情を見せない方が良い時もある。』くらいに教えたら良いのではないかと思います。